受注はあるのに資金繰りが苦しい。利益は出始めたのに、借入金が減らない。そんな中小製造業の経営者に考えていただきたい事例があります。
約90年の業歴を持つ紳士服・婦人服メーカーA社は、アパレルメーカー向けの受託生産を続けてきました。しかし、発注先の海外移転や受注競争で単価と数量が下落。設備費や人件費に加え、借入金の利払いも重荷となりました。財務調査では資産の評価減などを反映すると実質債務超過が判明し、返済原資に対して借入金が大きすぎる状況が明らかになりました。
第一の課題――「何を、誰に、いくらで売るか」を変える
A社は、海外生産品と価格で競う大量・低単価の受注から、高品質・小ロット・高単価の受注へ軸足を移しました。国内生産への回帰で生じた需要を捉え、既存製品の値上げ交渉も進めます。同時に、得意先別の売上を分析し、主要顧客の受注見通しを計画に織り込みました。
ここで大切なのは、単に「値上げする」と決めることではありません。顧客が国内生産に何を求めるかを見極め、品質・小回り・納期という価値を価格に反映させることです。工場の生産性向上、製造原価の改善、固定費の抑制も組み合わせ、営業利益を安定して確保する体質を目指しました。事例では、受注単価の引き上げが業績改善の大きな要因となりました。
第二の課題――黒字化と債務整理を別々に考えない
A社は損益改善によって黒字基調を取り戻したものの、過大債務の問題は残りました。そこで、財務デューデリジェンスで実態貸借対照表を作り、事業デューデリジェンスで顧客・市場・工場の実態を確認。得意先別売上、利益率、設備投資、返済に充てられる資金をつなげた再生計画を策定しました。
金融機関との協議では、借入金の一部を返済順位の低い債務と交換するDDS(Debt Debt Swap)も検討しました。こうした手法は事業の収益力と返済計画に裏付けがあってこそ意味を持ちます。「何年で利益を回復し、どの資金で返すか」を数字で示すことが、金融機関との対話の土台になります。
第三の課題――想定外に備え、事業を残す選択肢を持つ
DDS(Debt Debt Swap)を巡る協議中にコロナ禍で受注と資金繰りが悪化し、当初の再生構想は転換を迫られました。A社は、事業価値を理解する主力取引先をスポンサーに迎え、新会社への事業譲渡を通じて事業を承継しました。承継後の受注が徐々に回復しましたが、全面的な業績回復が確定したわけではありません。
この事例の成功要因は、
①早期に財務と事業の実態を調べたこと、
②利益を生む受注構造へ切り替えたこと、
③計画と実績を示して金融機関と協議したこと、
④環境変化を受けてスポンサー承継へ方針転換したことです。
利益改善を先送りしたまま財務手法だけを探しても、事業の存続は難しくなります。
ビジネスデザイン・パートナーズが伴走できること
当事務所は、得意先・製品別の採算と受注構造の分析、価格改定と生産体制の見直し、資金繰り・返済原資を踏まえた経営改善計画の策定と実行管理を支援します。事業承継やM&Aが選択肢となる場合も、事業価値の整理や候補先との検討を伴走し、法務・税務・金融の専門家と連携します。DDS(Debt Debt Swap)や債権放棄の可否は個別事情によって異なるため、具体的な手続きは金融機関・弁護士等との協議が必要です。
「黒字なのに借入金が減らない」「単価を上げたいが得意先との交渉が進まない」「後継者やスポンサーを含めて事業を残す道を考えたい」。そう感じたら、数字と事業の両面から現状を整理しましょう。ビジネスデザイン・パートナーズの無料相談・お問い合わせから、まずはご相談ください。


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